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【映画鑑賞】国宝

『国宝』

鑑賞日時:6/8(日)8:10

鑑賞映画館:新宿ピカデリー

【ネタバレ御免】

 任侠の世界と梨園の世界の接続。私は花井半ニ郎(渡辺謙)の妻・幸子役を寺島しのぶが演ずることで、この作品に登場してくる女性達の描き方が原作よりもかなり薄過ぎるという批判を乗り越えていると思う。

 それは半ニ郎が血の繋がった息子の俊介(横浜流星)を選ばす、極道の息子である喜久雄(吉沢亮)を『曽根崎心中』のお初に抜擢したり、三代目半ニ郎の襲名をさせたときに幸子はことごとく血筋の継承に反することをしている半ニ郎を責めているのだ。極めつけは半ニ郎が死んだ後に墓前で屋号を継ぐ意志を示した喜久雄に対して「盗人やん!」と詰る始末。

 父に七代目尾上菊五郎実弟に八代目尾上菊五郎、さらに息子尾上眞秀を育てている寺島しのぶの「男に生まれていたら歌舞伎役者になりたかった」という有名なエピソードに含まれる痛々しい血の宿命のリアリティを伴った迫真の演技を持って他の女性達の存在の薄さという原作の改変を許すものなのだ。

 血の宿命か?芸の決定的な優位か?の恐ろしいまでの緊張感を伴ったせめぎ合いを見事に映像化した傑作であることは間違いない。

 傑作であることを強調しつつ、惜しむらくは綾乃(瀧内公美)の唐突な登場場面だけが引っかかる。それはやはり喜久雄が綾乃の前で「悪魔に魂を売った」のセリフの場面に可能な限り呼応して欲しかった。私に言わせれば、梨園の血もあれば、任侠の血もありゃぁめえ!といった感想だ。

 まず綾乃がキャメラマンという設定は原作にはない。ここも大胆な改変。ただどうせそこまでやるならば綾乃は「お正月になると…」と言って喜久雄が人間国宝になったことを褒め讃えていたが、私としてはそんなセリフにしないで、徹底的に喜久雄を責めて欲しかった。恨みつらみの念を浴びせて欲しかった。これが悪魔に魂を売った見返りとして呼応する。

 その上で喜久雄が自分には任侠の血が流れていると振り返っても良かったのではないか?再度作品冒頭の権五郎(永瀬正敏)が雪の日に抗争で殺された場面を回想して欲しかった。そこからラストの『鷺娘』の舞いがさらに生きる。雪が降る闇夜の水上(地獄)の鷺を舞いながら仰ぎ見る天上を「きれいやな…」となるのだ。

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