『ストレンジ・ダーリン』
鑑賞日時:7/24(木)12:40〜
鑑賞映画館:新宿バルト9
森の鬱蒼とした茂みの中から鮮やかな赤色のスクラブを着たウィラ・フィッツジェラルドが悲壮感を漂わせて逃走する。銃を携えたカイル・ガルナーが執拗に女を追いかける。男はシリアルキラー?ならば女は何者なのか。
『ストレンジ・ダーリン』はシリアルキラーのスリラーものとされながらも鑑賞後感としては娯楽性が強く、個人的になかなか興味深い作品だった。その娯楽性というのは、全6章の構成にしつつも、時系列に沿った筋立ての表現にあえて逆らって3章目から始めることでもなく、35mm撮影で原色使いを程よく駆使し奇抜なアングルと音楽のスタイリッシュな映像表現でもない。
映画作品を観て、騙されたいと願っていた観客が積極的に映画館へ足を運び、願い通りに騙された!と呟き、同様にミスリードされたいと願う観客が予想通りにミスリードされた気分に陶酔できる特権的な娯楽性なのである。
たとえば暇な人間がたまたま映画館の前を通り「ふだんほとんど観ないけど、今日は暇だから映画でも観ようか」と思いつき、時間帯でこれからすぐに観られそうな映画作品が『ストレンジ・ダーリン』だったならば「なんだこれは?」となるかもしれない。
しかし少なくともこの作品の予告編をあらかじめ見ていた観客は本気で騙されることもミスリードされることもありえない。予想通りに「予想が裏切られる」だけなのだ。映画館の観客が騙されることへのひたむきな希求に没入感を味わせてくれる映画作品特有のエンターテイメントなのである。これから観に行く映画好きは必ず騙されなくてはならない。
